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マラソンを始める前の基礎知識



特別な知識がなくてもマラソンを走ることはできますが、知っておくとプラスになる基礎知識があります。走るエネルギーはヒトの体の中でどのように作られるのか、マラソンランナーと短距離走者の筋肉の違いは何か、筋肉痛はなぜ起こるのかなど、ランニングやマラソンにかかわる人間の体のしくみを知っておくと良いでしょう。多くの研究者やトレーナーが長い時間をかけて研究してきた様々な結果の中から、トレーニングをより効果的なものにできたり、記録アップにつながる秘訣を見出したりということができるはずです。

一般的な知識を身に付けたうえで、マラソン完走へ向けてのそれぞれの体力や能力に合ったトレーニングや練習法のヒントを見付け出しましょう。

走るエネルギー

走るエネルギー

マラソンの競技時間は、エリート選手でも2時間、市民ランナーでは3時間から、長い人では6時間程度にわたります。長時間にわたって走り続けるには、弛緩と収縮を繰り返し、筋肉を動かし続けなくてはなりません。筋肉の収縮には筋肉中のアデノシン三リン酸(ATP)が分解されるときに出るエネルギーが必要です。このATPはごくわずかしか貯蔵されていないので、走りながらATPを作る必要があります。

ATPを作るには次の3つのしくみがあります。①筋肉内にあるクレアチンリン酸(CP)から作る/②筋グリコーゲンを分解して作る(解糖系・乳酸系)/③酸素を利用して作る/①と②については、ATPの合成速度が速いのですが、作られるATP量がわずかなため、長時間の運動を行なうのには足りません。したがって、マラソンで使われるエネルギーは主に③のしくみで作られます。体内に酸素を取り入れ、グリコーゲンや脂肪を燃焼してATPを合成することから、「有酸素系」と呼ばれます。①②の無酸素系に比べてATP合成の速度が遅く、すばやい運動には対応できませんが、理論的には酸素が供給され続け、ATP合成の材料があるかぎりエネルギーを作ることができます。

短距離走とマラソンの違い

短距離走とマラソンの違い

実際の運動では、スピードや運動時間などの特性に対応したエネルギー産生が行なわれています。

短距離走のエネルギー

短距離走のエネルギー

全力疾走する短距離走では、何よりも筋収縮の速さが重要で、すばやくエネルギーを作ることが求められます。そのため、ATP-CP系や解糖系によるエネルギーが利用されます。短距離走は非常に短い時間で行なわれるため、エネルギーの産生では酸素は必要とされず、ほとんどはグリコーゲンの燃焼によってまかなわれます。

マラソンのエネルギー

マラソンのエネルギー

マラソンのように比較的ゆっくりしたスピードの運動では、酸素を体内に取り入れ、グリコーゲンと脂肪を燃焼しながら運動を続けます。走るスピードによってグリコーゲンと脂肪の利用割合は異なり、ゆっくりしたスピードのマラソンの場合は、脂肪の割合が高くなります。しかし、グリコーゲンの利用率がゼロになることはありませんし、グリコーゲンがなくなると脂肪を燃焼できなくなるため、マラソンランナーにとってグリコーゲンのもととなる炭水化物の摂取が重要です。

疲れにくい筋肉

疲れにくい筋肉

いくつかの筋線維が集まってできている筋肉。筋線維には異なるタイプがあることが知られています。収縮速度は速いがすぐに疲労する速筋繊維、収縮速度が速く、やや疲労しにくい中間筋線維、収縮速度は遅いが、疲労しにくい遅筋線維です。

筋肉内の筋線維が占める割合を「筋線維タイプ別構成比率」と言い、一般成人の大腿四頭筋では、速筋繊維と遅筋線維の割合はほぼ50%ずつです。ところが、マラソンのトップランナーの場合は、遅筋線維の割合が80%以上を占めています。これとは逆にトップスプリンターの場合は、速筋繊維が80%以上となっています。遅筋線維を多く持つことで、マラソンランナーは長時間の走行でも疲れにくいのです。

これまでの研究では、トップ選手に見られる特殊な筋線維タイプ別構成比率の多くは、先天的な要因によって決まると言われています。しかし、トレーニングによっても筋線維の割合にいくらか変化があることは確認されています。

筋疲労のメカニズム

筋疲労のメカニズム

快調に走っていても、筋肉の疲労(筋疲労)により、次第にそのスピードを維持できなくなります。筋疲労には、①最大筋力が低下し、期待される筋力が発揮できなくなった状態 ②一定の筋力発揮を持続することができなくなった状態 があります。ランニングでスピードを維持できなくなるのは②の状態です。

筋疲労には様々な原因があります。速いスピードで走ると乳酸が蓄積し、ATPの分解が抑制されます。スピードによっても異なりますが、乳酸の蓄積は筋疲労の大きな原因です。他に、グリコーゲンの枯渇、体温上昇や水分不足など身体の内部環境の失調などが挙げられます。また、筋肉自体の疲労だけでなく、筋収縮の指令を出す大脳の疲労も筋疲労に影響しています。大声を出すことで一時的に筋力が増加したり、レース中に声援などで頑張ることができたりという効果は、大脳からの抑制が解除されて神経興奮が大きくなるためです。

筋肉痛と超回復

筋肉痛と超回復

運動負荷を大きくすることで起こる筋肉痛。これには、「早期性筋肉痛」と「遅発性筋肉痛」があります。早期性筋肉痛は、激しいトレーニング時に起こるもので、激しい筋収縮による酸欠や疲労物質の蓄積、筋線維の損傷に伴う炎症などを原因とするものです。これに対して、遅発性筋肉痛はトレーニングの翌日に表れます。強い伸張性筋収縮運動によって筋線維が損傷し、痛みが発生するというメカニズムです。この遅発性筋肉痛は、加齢によって現れるのが遅くなることが知られており、3日後や1週間後に起こるといったこともあります。

筋疲労や筋肉痛は、ボディケアや休養、筋グリコーゲンの補充などによって回復します。枯渇状態になったグリコーゲンは炭水化物の補給によって、トレーニング前よりも多く貯蔵されます。これによって、損傷部位では損傷の前よりも多くの筋たんぱく質が合成され、筋線維は増殖して再生されます。このようにダメージを受けた筋肉組織がもとの状態以上に回復する現象を「超回復」と言います。この超回復時にトレーニングを行なうと、効果的に身体能力を向上させることができるとして注目されています。

マラソンランナーの体型

マラソンランナーの体型

トップランナーで肥満している人はおらず、全体的にやせすぎと思われるくらいです。全体重に占める体脂肪の重量を比率で表した体脂肪率をみると、トップランナーは男性で5~8%、女性で10%前後。一般成人男性の平均が20%前後で、女性が24%前後であることと比べるとかなりやせています。

体脂肪は低い程良いという訳ではなく、身体機能を維持するために男性は3~4%、女性は9~12%が最低限必要と言われています。体脂肪が極端に低くなるとホルモンの働きが妨げられ、気力や生理機能の低下といった弊害も出るので、一般の市民ランナーでは、男性は10~15%、女性では15~20%くらいを目安にするのが良いでしょう。

マラソンは自分の体重を運ぶ作業とも言えるため、体重が軽い程エネルギー消費量が少なく、ランニング効率は良くなりますし、体重が減ると体重あたりの最大酸素摂取量が増えるため、速いスピードで走れるようになります。また、ランニングの着地時の足の負担は体重の3倍と言われているため、減量すれば足の負担も軽減されます。

減量すると速くなるか

減量すると速くなるか

前述した通り、やせ型の体型になると、エネルギー消費量が少なくなる、体重あたりの最大酸素摂取量が大きくなる、足の負担が軽くなるなど、プラスの要素が増えます。実際に減量して記録が向上したというランナーも多く、1kgやせると3~6分速くなるという説もあります。しかし、減量が記録に与える影響は、年齢や身長、体重、体脂肪率などによって異なります。明らかに体重オーバーのランナーがトレーニングによって減量すれば、記録は向上します。また、減量目的で始めたランナーがマラソンを完走できるようになり、記録が向上することもあります。すでに十分スリムなランナーは減量する必要がありません。減量の中身も問題ですから、脂肪体重を減らして、徐脂肪体重はキープしましょう。

これとは逆に、やせすぎのランナーが筋力を付けて、記録が向上する場合もあります。個人にはそれぞれベスト体重があるので、レース出場時の体重や記録をメモしておくと良いでしょう。

最大酸素摂取量

最大酸素摂取量

最大酸素摂取量とは運動中に酸素を摂取できる上限、または有酸素系エネルギー産生の上限、有酸素系エネルギーの最大値を表します。このことから、呼吸・循環機能の総合的な能力として、あるいは全身持久力の指標として用いられています。トップランナーの最大酸素摂取量は体重あたり、男性で75~85ml/分(1分当たり)/kg(体重1kg当たり)、女性で63~78 ml/分(1分当たり)/kg(体重1kg当たり)程度です。一般成人の場合は、30代男性の基準値が38 ml/分(1分当たり)/kg、女性で32 ml/分(1分当たり)/kgですから、トップランナーの数値が際立っていることが分かります。

最大酸素摂取量は、トレーニングによって増大します。これは、呼吸・循環器が適応してその機能が向上するからです。トップランナーの高い最大酸素摂取量は、もって生まれた素質もありますが、多くはトレーニングによって獲得されたものです。一般成人なら、最大酸素摂取量の50~60%くらいのややきついと感じるスピードで、1回30分、週2~3回、2~3か月のトレーニングで最大酸素摂取量が向上します。